張子のお面の展覧会
百鬼ア・ゴーゴー展

会期:2014年10月17日(金)~30日(木)
会場:アートスペース風(千葉県南房総市千倉町)»地図を見る


展示風景

個展のタイトルに引用した『百鬼夜行絵巻』は、室町時代に描かれたのが始まりだったようですが、その後、江戸から明治の頃まで繰り返し描かれています。「百鬼夜行」は、それだけ人気のあるテーマだったということなのでしょう。
絵巻には、夜も更けて寝静まった京の大路を、鬼や妖怪が行列をつくって闊歩する様子が描かれています。しかし、鬼や妖怪といっても地獄絵のような凄みはなく、むしろ、奇妙な姿をした妖怪たちがお囃子に乗って踊りながら練り歩く、祭の行列を描いた愉快なパノラマ絵巻といった感じです。

今回の個展もその『百鬼夜行絵巻』のように、変てこなオニやバケモノがギャラリーに集まってパーティしてるような、賑々しく楽しい雰囲気の展示にしたいと考えていましたが、どうだったでしょうか。


お面について

張子のつくりかた 今回出品するお面は、張子のベースに近所の海岸や空地や道端に落ちていたもの(錆びた金具、プラスチック製品の断片、流木など)をくっつけてつくっています。

張子は以下のような手順でつくります(右図参照)。

  1. 油土で原型をつくる
  2. 原型に水で溶いた石膏をかける
  3. 石膏が乾いたら、粘土の原型を取り出す
  4. 石膏の型に張子紙を糊で貼りこむ
  5. 貼りこんだ張子紙が乾いたら石膏の型から外す

石膏の型に貼りこむ張子紙は、以前は市販のものを使用していましたが、現在は紙製の卵パックや不要になった紙を利用して自分で漉いています。市販のものと比べれば品質の面において雲泥の差がありますが、湯島まで買いに行くのも大変だし、それにリサイクルによって材料を調達しているという意味で自漉紙を使う価値はあると思っています。

できあがった張子のベースに、下地として膠で溶いた石膏と灰を塗り、乾燥したら土絵具で地塗ります。それからさらに塗ったりくっつけたりの作業を繰り返して完成へと向かうわけです。実際手を動かしている時間は結構短いのですが、詳細なプランなどはなく行き当たりばったりでつくって行くので、完成までの道のりは意外にロング・アンド・ワインディングロードです。未完成のまましばらく壁に掛けられることになります。中には数年も放置されたものあります。
絵具のメディウムや接着剤に天然由来のものを多く使うようになったので乾燥に時間がかかることや、平日は社会人として労働に勤しんでいるため、制作のために連続した時間を使うことができないことも主な理由ですが、壁にいくつもかかった未完成のお面が少しずつ出来上がってゆくのを毎日眺めていると、自分がつくっているという意識が希薄になり、なんだかお面が自然に少しずつ成長しているんじゃないかと思うこともあったりして愛着がわいてきます。

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オニについて

最近はオニの姿を見ることもなくなりました。今や諺とか慣用句の中でしか会えません。一瞬、昔はよく見たような気がしましたが、それも気のせいでした。昔見たオニは、節分のお面とかドリフのテレビとか、いやあれば高木ブーのカミナリ様か。でも、カミナリ様もオニの仲間だから、あれが動いてる姿を見た最後のオニかもしれません。オニなんてとっくの昔にいなくなってしまったのでした。
と思っていたら意外なところにオニがました。
初夏の頃のとある夕暮れ、タソガレた漁港を散歩しているときにふと「オニがいる」と感じたのです。オニは私の心の奥底の闇の中にいました。心の闇がオニの棲家だったのです。私は急いで家に帰ってそのオニを追い出し、お面にしてやりました。それが今回の展覧会の始まりです。
調べてみると、枕草子や源氏物語には、すでに「心の鬼」という言葉が出てくるそうです。人間の心には、ずいぶん昔からオニが棲んでいたんですね。
その後もオニは出てきます。出てきたオニはお面にしてやりました。お面になったオニを見ると、どれもなんだか暢気な顔をしています。私の心の闇も案外浅いのかもしれません。

ジジイについて

私の住んでいる町は田舎の漁村なので、道を歩いて出会うのは高齢者かサーファーです。そう言ってる私にしても還暦を目前に控えし身となれば間違いなくジジイです。ジジイなのでつくるお面も自然とシワだらけのジジイになります。
冒頭でご紹介した『百鬼夜行絵巻』には、鬼や動物の妖怪の他に、楽器や仏具、厨房道具などが化けた妖怪も大勢登場します。それらは「付喪神(ツクモガミ)」といわれる古道具の妖怪ですが、「付喪」は「九十九」の当て字で、当時は道具も古くなるとオニになって悪さをするから、百年になる前に捨ててしまわなければならないと考えられていたそうです。
古道具がオニになるのなら、人間だって歳とって古くなればオニになるでしょう。そして最後は鬼籍に入ってお終いです。
それでジジイもオニの仲間入りと相成りました。
同じ年寄りでも「翁(オキナ)」とかいうとなんだか気取っていて居心地が悪いので困ります。「ジジイ」の方が下世話な感じがして気楽でよいかと思います。
ちなみに、ジジイのお面は「爺面(ジイメン)」と呼びます。能登の御陣乗太鼓の爺面はいかにも頑固そうな浜の爺という面構えですが、こちらの爺面はちょっと呆けた爺さんという感じです。

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